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zoom RSS 長編童話  楽園の王者

<<   作成日時 : 2010/08/02 21:15   >>

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  10 望まれた悲しい結婚

 土の中からカブトがいなくなり、カブロクもカブノスケも出ていってしまってから四日目の夜のこと、カーコが地上に出たとき、そこでは、カブキチが羽をバタつかせて飛ぼぅとしていました。
けれど、カブキチの身体は、傷を負ったよぅに所どころが変形していて、力も弱く、思ったよぅにならなくて、とても苦しげでした。
カーコは、そんなカブキチを残しては行けなくなって、励まし励ましして少しづつ飛んでは休み、カブキチも少しづつ力がついて飛べるようになったのでした。
畑を越え、田の畦道(あぜみち)のはんの木からはんの木へ移っては休み、よぅやく林の近くまで来たのでした。
「もぅ少しやでな」
カーコの言葉に、カブキチは懸命に飛んでいましたが、林にたどりつくとバタッ、と木に止まりました。
カーコも、カブキチの横に止まりました。
「なぁ、キッちゃん、ここまで来たら、もぅ安心やに。はんの木におったとき、シタバチョウさんがおっしゃってみえたやろ。林には、たっぶりおいしい樹液の出る木があって、私らの仲間もよぅけ住んでるって」
カブキチは、ハァハァと胸から息をしながらうなずきました。
「皆に会えるとええのぅ」
カーコは優しく微笑みうなずいて、
「あ、ほぅやわ、このあたりを見てくるよって、ちょっと休んどってな」
と、軽やかに飛び立ち、林の奥へと姿を消しましたが、とんぼ返りをして、すぐに戻ってきました。
「一休みしたら行こな。すぐ近くやでな」

 カーコが見つけたクヌギは、液もたっぶりでしたが、そこには、つやつやと健康そぅなカブト虫が6匹いました。
カーコとカブキチは、にじんでいる液の前に着くと互いに喜び合いました。
「よかったあ」
カーコは、にこにこと楽しく液を飲みました。
カブキチも、にこにこと飲みました。
「今までの中で一番美味しい」と言って飲みました。
6匹のカブト虫達は、優しい目をした生き生き明るいカーコを見ていました。
そして、どのカブト虫も、カーコと結婚したいと思ったのです。
その中で、角(つの)が一際立派で、力の強そうなカブト虫がカーコに結婚を申し込みました。
 こんなにたくましい虫が私に・・・。
カーコは言葉につまりましたが、「はい」と小さな声でうなづきました。
こんなにも輝いたカーコの顔は、初めてです。
カーコが幸せになれるなら、とカブキチもうなづきました。
カーコの心は、香りを放って幸せの花が咲いたよぅでした。
花のよぅに微笑むカーコを、優しく見ていたたくましいカブト虫は、身をひるがえすと、いきなりその立派な角と強い力で他のカブト虫を投げとばしてしまいました。
カーコは、あっと息をのみました。
目の前で次々と5匹が投げ飛ばされ、姿を消し、木に残ったのは、カーコとカブキチと、たくましいカブト虫だけになりました。
そのカブト虫は、もはや、恐い目でカブキチを見ていました。
次はぼくの番や!カブキチはそぅ悟ると、
「カーコ幸せに!」
言ぅが早いか、力をふりしぼって飛び立ちました。
「キッちゃん !」
思いがけない出来事に、結婚の夢を捨て、カーコが後を追おぅとすると、
「行かないで」
気弱な顔をして、たくましいカブト虫が目の前に立ちはだかりました。


     つづく  


 

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