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zoom RSS    童話     雪 花                

<<   作成日時 : 2008/09/14 03:54   >>

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 人から人へ 町から町へ 大幸病院の院長先生は 優秀な博士で 誠実な名医だと評判になっていました。
 徹也少年は  それを知りませんでしたが、その父母を尊敬して素直で賢い子供でした。


 ある冬の冷たく寒い日のこと、暖かい家の中で、徹也少年は熱心に絵を描いていましたが、足りなくなった絵の具が欲しくなって、町内の文房具店へ出かけたのです。
 人もまばらな大通りを行くと、灰色の寒空から雪がひらひら舞ってきたのでした。
「 雪か 珍しいナ 」
足を早めて お店に着くと、白と緑と青のチュウブの三色を買い、帰り道を急ぎました。
 さわさわと降るボタン雪をながめながら歩いて行くと、古い家の前で、少女が一人、しきりに降ってくる白い大空を見上げて、落ちてくる雪花を両手で受けているのでした。
その黒髪にも、両の赤い手袋にも、ほんのり、ふわりと、ぼたん雪が乗っているのでした。
「 可愛い・・・・・ 」
徹也少年が立ち止り、見ていると、真奈子は気がついてはにかみ、それから、うつむいて、自分のズボンのひざの色違いな継ぎを見て、バッ、と家の中へかけこんで行ってしまいました。 
徹也少年の心に 、真奈子の姿がいつまでも残りました。
 文房具店へ行くたびに、真奈子の家の前を通るのでしたが出会うことは無く、年月がすぎたのでした。


 徹也少年は、父のようになりたくて勉学に励み、念願の京東大学医学部に合格し、卒業して、大学病院の外科医となったのです。
 父母の大幸病院も大きく、広く、建物も設備も、立派な大病院になっていました。
医師になった青年の徹也は、昼も夜も無く、毎日、いかにして病いを治さんと 明け暮れたのでした。
そして、数年が過ぎた年末に、やっと休暇で故郷へ帰ったのでした。

 
 懐かしい小学校のクラス会、徹也は連絡されたお店の二階へ来たのでした。
皆、少年少女時代の懐かしい友達です。
大人になった一人一人の顔も姿も、職業も、思いがけなくて楽しさいっばいです。
それぞれの目の前、小さな鍋物の火が消えかかっていました。
 一人のきれいなクラスメートが、遠慮しながらも 立派になった徹也に近づいて、小さな声で言いました。
「・・・三つ下の 広野真奈子ちゃん 知ってみえます? 」
徹也が優しい目をしてうなづきました。
「 私の従妹なんです。 てっちゃんが京東医学部に合格して東京へ行かれたことを話したら、私、看護士になるわ、って言ったの。 それで看護学校でて、大幸病院さんにつとめてたんよ。 いつか てっちゃんと一緒に働けたら幸せだって言ってたのに。・・・・・前から 熱烈に望まれてて、去年の秋に結婚して浦安へ行ったの。・・・ 」
 徹也は、どんなに驚いたでしょう。
ただ一度、一目だけの、あの時がよみがえり 胸がキリリと痛くなりました。
ズボンの両ひざにつぎがあった。大きくなったら結婚して、新しい素敵な服を着させてあげるんだと、思い考えた少年のころ。 徹也は少女の真奈子の、あのきれいな顔と、赤い手袋を目に浮かべ、初恋が雪花のようにはかなく消えたことを知ったのでした。



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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは
初恋 とても物悲しくて 切なくて それでいてなぜか淡く優しい気持ちになれますね。

エッセーのような、なんでしょう。
とても不思議な香り。
kyoー
2008/09/17 18:05
初恋の時を想い出してしまいました。
本当に、周りが何も見えなくなって、全てに優しく出来る自分が居ます。
そんな事を想い出させてくれました。
...今は....忘れてしまったのかも...。

リクエストが有ります。
小さな動物の赤ちゃんを描いた童話が読みたいです。
...涙が出てくる様な♪
by TOMO
conan0o0
2008/09/18 17:14
   童話     雪 花                 春夏秋冬/BIGLOBEウェブリブログ
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